色鉛筆売り場に行くと、だいたい最初に迷うのが色の数だ。12色、24色、36色。さらに上を見ると、60色や100色を超えるセットまである。

12色では少ない気がする。でも、いきなり36色も使いこなせる気がしない。値段も当然違う。箱を開けたときのうれしさだけでいえば、多い方が強いのだけれど、色鉛筆はコレクションではなく、いちおう描くための道具である。

では、実際のところ何色くらいあれば楽しめるのだろう。

先に答えてしまえば、12色でも十分に絵は描ける。ただし、24色になるとずいぶん楽になる。36色になると、今度は「選ぶ楽しさ」が加わってくる。色数が増えるというのは、単純に使える色が増えるだけではないらしい。

12色。足りないから、考える。

子どもの頃に使っていた色鉛筆を思い出すと、12色くらいだった人も多いのではないだろうか。赤、橙、黄、緑、水色、青、紫、桃色、茶色、黒。メーカーによって多少違うけれど、基本になる色がひと通り入っている。

12色で風景を描こうとすると、当然ながら「欲しい色がない」という場面が出てくる。海に使える青が一本しかない。木を描きたいのに緑も一本。夕焼けにちょうどいい赤紫も入っていない。

そこで、色を重ねることになる。

青に少し緑を重ねる。黄色の上に茶色を薄く入れる。赤と青を重ねて紫に近づける。色鉛筆は絵の具のようにパレットで混色することはできないが、紙の上で薄い色を重ねれば、手元にない色をつくることができる。

12色は、選択肢が少ない。その代わり、「どうすればこの色になるだろう」と考える機会が多い。色鉛筆の基本を知るには、案外おもしろい数なのだ。

24色。だいたいの風景に困らなくなる。

12色から24色になると、箱の中が急ににぎやかになる。同じ青でも、水色のほかにもう少し深い青が入っていたり、緑も明るいものと暗いものが揃ったりする。赤と茶色の間、黄色と茶色の間のような、説明しにくい色も増えてくる。

この「説明しにくい色」が意外と便利だ。

木の幹を描くなら、いつも茶色とは限らない。光が当たれば黄土色に見えることもあるし、影に入れば灰色に近くなる。人の肌も単純な肌色一本ではなく、赤や黄色、茶色を少しずつ使う方が自然に見える。

24色くらいになると、こうした中間の色を最初から選べるようになる。そのぶん、いちいち色をつくらなくても描き進められる。

はじめて大人になって色鉛筆を買い直すなら、24色はかなり気楽な選択だと思う。多すぎて迷うほどではなく、少なすぎて困ることも少ない。机の上に広げても、まだちゃんと全部の色を見渡せる。

「とりあえず一箱」という意味では、なかなかよくできた色数である。

36色。似た色を選ぶのがおもしろくなる。

36色まで増えると、少し事情が変わってくる。

必要な色が揃うというより、「どちらを使おう」と迷えるようになるのだ。

青が三本あれば、海だから青を取るのではなく、この海ならどの青が近いかを考える。緑が何種類もあれば、春の葉と夏の葉を別の色で描き分けることもできる。茶色にも赤みのあるもの、黄色っぽいもの、深いものがあって、一本ずつ見れば微妙な差なのに、紙に塗るとはっきり違って見える。

このあたりから、色鉛筆の楽しみ方は「塗る」から「選ぶ」に少し広がる。

36色あるから絵が上手になるわけではない。むしろ、使わないまま短くならない色鉛筆も何本か出てくる。それでも、似た色が並んでいること自体に意味がある。描いている途中で一本隣の色を試してみる。それだけで、いつもの空や木の色が少し変わる。

文房具として考えても、36色くらいから「道具を持つ楽しさ」が強くなってくる。

結局、何色を買えばいい?

色数を増やせば増やすほど、絵がきれいになるわけではない。12色でも色を重ねればかなりの表現ができるし、120色持っていても、いつも同じ10本ばかり使う人もいる。

だから選び方は、案外単純でいい。

ちょっと久しぶりに色鉛筆を使ってみたいなら12色。風景や塗り絵を気軽に楽しみたいなら24色。色そのものを選ぶところから楽しみたいなら36色。そのくらいに考えておけば、大きく外すことはない。

そして、使っているうちに「もう少し暗い青が欲しい」「この緑だけすぐになくなる」と思ったら、そのとき一本ずつ足せばいい。

琴平文具店でつくっている「四国の風景」のような色鉛筆画も、箱に入っている色をそのまま当てはめて描いているわけではない。海や空、木々の色を見ながら、何本かの色を選び、薄く重ねていく。色数が増えるほど選択肢は増えるが、最後はやはり、どの色を使うかを自分で決めることになる。

色鉛筆は、全色を均等に使わなくていい文房具だ。

青ばかり減ってもいい。緑だけ妙に短くなってもいい。ほとんど使わない紫が一本残っていたっていい。

何色入りを買うかより、使い始めてから自分なりの色の偏りができていく。そのあたりから、色鉛筆は少しおもしろくなる。