木軸の面白さは、木目と手触り、それから使ううちの変化にある。ただし、変わり方も手入れも、樹種と仕上げによって違う。

買った日が、いちばん美しくない。

たいていの道具は、買った瞬間がいちばんきれいだ。

金属は傷がつく。樹脂は色が褪せる。ゴムは硬くなる。使えば使うほど、新品から離れていく。

木は逆だ。使うほど良くなる。

木の種類や仕上げによっては、使ううちに色や艶が変わっていく。指が触れるところが磨かれ、新品とは違う表情になる。変化の速さは、使い方や保管環境によっても違う。

だから、木の軸のシャープペンシルを買うと、最初は少し物足りない。木目はきれいだが、まだ乾いた顔をしている。

いつ変わり始めるかは一律ではない。少しずつ眺めていると、持つところの艶に気づくことがある。

この変化は、その人の持ち方によって出る。同じ製品を二人が使えば、二年後には違うものになっている。

持つところだけが濃い。指の当たる面だけが光っている。その形が、その人の持ち方そのものだ。

重さも、手触りも、樹種で変わる。

木の軸は、金属や樹脂と違って材料が一定ではない。

まず重さが違う。硬くて詰まった木は重く、軽い木は驚くほど軽い。同じ形のシャープペンシルでも、樹種が違えば持った感じがまるで変わる。

手触りも違う。目の詰まった木はすべすべしていて、粗い木は少しざらつく。

色は言うまでもない。白に近いものから、ほとんど黒いものまである。同じ樹種でも、切り出した場所で色が違う。

そして木目だ。これは一本ずつ違う。同じ型番を二本並べても、模様は同じにならない。

このあたりが、金属や樹脂の道具と決定的に違うところだ。選ぶという行為の意味が変わる。仕様を選ぶのではなく、その一本を選ぶことになる。

通販で買うときも、同じ商品名で写真が一本ずつ違うことがある。届くまで、どれが来るか分からない。

木は、少し気をつかう。

いいことばかりではない。木の軸には弱点もある。

まず、水に弱い。濡れたまま置いておくと膨らんだり、染みになったりする。雨の日に鞄の中で濡れていた、という事故は起きる。

乾燥にも弱い。冬に暖房の効いた部屋に置きっぱなしにすると、木が痩せて金属部分との間に隙間ができることがある。

落とすと欠ける。金属なら凹むだけのところが、木は割れることがある。

日に当てると色が変わる。窓際に置いておくと、当たっていた面だけ褪せる。

こう並べると面倒に思えるが、実際にはそこまで神経質にならなくていい。筆箱に入れて持ち歩き、普通に使っているぶんには問題が出ない。

ただ、金属の軸より少しだけ気をつかう道具ではある。そこを承知して選ぶものだと思う。

逆に言えば、気をつかう相手ができるということでもある。放っておいても平気な道具とは、付き合い方が変わる。

金属と、木の間。

木軸のシャープペンシルには、軸全体が木のものと、握るところだけが木のものがある。

軸全体に木を使うものもあれば、グリップだけに使うものもある。重さは樹種と内部の金属部品で変わり、木が多いから軽いとは限らない。

握るところを木、後ろを金属にした製品もある。クルトガ ウッドは、その組み合わせの一例だ。素材の配置だけで重心は決めつけず、一本の設計として見たい。

触れる部分だけ木にすれば、手触りと経年変化は得られる。重さと重心は金属で決められる。よく考えられている。

値段も、この組み合わせの方が抑えられることが多い。全体が木で、しかも良い材を使うと、どうしても高くなる。

初めて木軸に入るなら、握るところだけ木のものから試すのがいい。木の良さは分かるし、書き味は金属軸に近い。

そこで気に入ったら、次に全体が木のものへ進めばいい。

見える木の面積は違っても、どちらにも手触りを楽しむ余地がある。重心と書き味は、持って確かめたい。

木は、音が違う。

もう一つ、あまり言われないことがある。木の軸は音が静かだ。

机に置いたときの音が違う。金属の軸はかつんと鳴るが、木はことりと落ちる。筆箱の中で他のペンと当たっても、耳障りな音が出ない。

ノックの音も、少し柔らかい。中の機構は同じでも、軸が音を吸うので響き方が変わる。

図書館や、静かな部屋で書く人には、これが効く。自分の出す音が小さいというのは、思っている以上に落ち着く。

冷たくないのも木の良さだ。冬の朝に金属の軸を握ると、しばらく指が冷える。木は最初から手の温度に近い。

こういうことは、書き味の話には出てこない。けれど、道具と過ごす時間の質には確実に関わっている。

直しながら、長く使う。

木軸にも、修理して使える製品がある。どの素材が丈夫かは設計や使い方によるので、材質だけで寿命は決められない。

手入れは、まず製品の案内を確認する。塗装や樹脂含浸など仕上げが違うので、自己判断で紙やすりをかけたり油を塗ったりすると、表面を傷めることがある。

角が丸くなりすぎたら、それはそれで味になる。何十年も使われた木の道具が古びて見えないのは、そのためだ。

つまり木軸は、使いながら手を入れる道具だ。買って終わりではない。

このあたりが、高い時計や革靴に似ていると言われる理由だと思う。手を入れた分だけ応える。放っておけば、それなりになる。

琴平文具店の特集では、木軸を素材、樹種、工房、S20の四つの入口から紹介している。一本のどこに惹かれたのかで、読む順番を選べばいい。

たいてい、しばらく見比べてから決める。仕様では決められないからだ。

同じ値段、同じ形、同じ機構。違うのは木目だけ。それでも、人はちゃんと一本を選ぶ。

木のシャープペンシルは、育つ。買った日は、まだ途中でしかない。

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