オレンズネロは、芯をパイプで守り、紙からペン先を離すたびに芯を送る。二つの機構が、途中のノックを減らしている。
ノックの回数を、数えたことがあるだろうか。
シャープペンシルを使っていて、意識しない動作がある。ノックだ。
芯が短くなったら、上を押す。書く。また短くなったら、押す。一時間書けば、何十回もやっている。慣れているので、いちいち覚えていない。
けれど、この動作は確実に手を止めている。押すたびに、ペンの持ち方が一度崩れる。持ち直して、書く場所を探して、また書き始める。
一回は一秒に満たない。それが何十回も積み重なる。
このノックを、最初の一回だけにしたシャープペンシルがある。オレンズネロという。
使い始めの操作を行えば、残り芯が短くなるまで、途中のノックを減らして書ける。
書く途中の小さな中断を減らす。言葉にすると地味だが、ノックが気になる人には確かめたい違いだ。
守る仕組みと、送る仕組みがある。
オレンズネロには、役割の違う二つの機構が入っている。
一つは、芯をパイプで守るオレンズシステム。芯が減るにつれて先端のパイプが下がり、芯を支えたまま筆記を続ける。
もう一つが、自動芯出し機構だ。紙からペン先を離すたびに芯を送る。この動きがあるから、パイプが下がりきるたびにノックする手間を減らせる。
パイプが引っ込むことだけで、芯が出続けているのではない。守る動きと送る動きが重なっている。
ぺんてるの公式説明も、最初のノックから「残り芯が短くなるまで」を対象としている。次の芯への切り替えまで含め、永久に操作不要になるわけではない。
最初は、たいてい戸惑う。
初めて使うと、多くの人が違和感を持つ。
まず、書いている音が違う。金属のパイプが紙に触れているので、かりかりと硬い音がする。樹脂の軸で芯だけが当たっている感触とは、明らかに別だ。
パイプが紙に触れる感触には好みがある。紙の表面や持つ角度でも違うので、硬い・柔らかいを一律には決められない。
芯径によって向く文字の大きさは変わる。〇・二、〇・三だけでなく、〇・五ミリもあるので、普段使っている太さを起点に考えたい。
そしてもう一つ、使い始めに一度ノックするのを忘れると書けない。当たり前のことだが、ノックしなくていいと思い込んで、最初の一回も押さないという間違いが起きる。
このあたりを越えると、あとは楽になる。手が止まらないことに慣れると、他のシャープペンシルに戻ったときにノックが煩わしく感じられる。
合う人と合わない人が、はっきり分かれる道具でもある。試し書きを一行しただけでは、たぶん良さが分からない。ノートを一ページ書いて、ようやく効いてくる種類のものだ。
二〇一七年から続く、三つの芯径。
オレンズネロは二〇一七年に登場した。二〇二六年九月時点の公式製品情報では、〇・二、〇・三、〇・五ミリを案内している。小売価格はいずれも税込三千三百円だ。
極細の文字を詰めて書くなら〇・二や〇・三ミリが候補になる。いつもの〇・五ミリで使いたい人にも選択肢がある。細い芯でなければ使えない道具ではない。
購入直後の最初の芯出しは、〇・二と〇・三/〇・五で手順が違う。手元の芯径に合った公式の使い方を確認してから使いたい。
流通や在庫は販売店ごとに変わる。現時点で「品薄が続いている」「生産が難しいから買えない」とは断定しない。価格と使い方を知ることと、店頭にあるかを確かめることは別だ。
機構は、目的から選ぶ。
ここまで、芯が回るものと、ノックが要らないものを見てきた。
どちらも「手を止めさせない」ための機構だが、止めさせない理由が違う。回る方は、線が太くなるのを防いでいる。ノックが要らない方は、芯を出す動作そのものを消している。
だから、自分が何に手を止められているかで選べばいい。
線が太くなるのが気になるなら、回る方。ノックが煩わしいなら、出続ける方。芯が折れるのが困るなら、パイプで守る方。
全部入っているものもあるが、そのぶん値段が上がり、構造も複雑になる。必要のない機構まで抱える必要はない。
自分の書き方を知るのが先で、機構を選ぶのはその後だ。
書いている間、道具のことを考えない。
良い道具は、使っている間に存在を忘れさせる。
書いている最中に、シャープペンシルのことを考えている時間は、本当は無駄だ。芯が折れた。線が太い。芯が出ない。そのたびに、書いていた内容から意識が離れる。
高いシャープペンシルが目指しているのは、たぶんそこだ。書いている間、道具のことを考えさせない。
琴平文具店のこの特集では、クルトガの回転機構とも分けて説明している。片減りを減らしたいのか、ノックを減らしたいのか。目的から比べると分かりやすい。
その感触が合えば、毎日の一本になる。合わなければ、必要な機構だけを持つ別の一本を選べばいい。
最初の一ノック。その先に、芯を守る仕組みと送る仕組みがある。
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