芯の向きを変える、芯を送る、芯折れを防ぐ。三つを分けて考えると、自分に必要な機構と、なくても困らない機構が見えてくる。
人がやっていたことを、道具が引き受けた。
シャープペンシルの歴史は、人の動作を機械に移してきた歴史でもある。
もともと、書く人がやっていたことがいくつもあった。芯が減ればノックする。線が太くなれば指で回す。折れないようにそっと書く。芯が中で詰まれば振る。
このどれもが、書くことそのものではない。書くために必要な、付帯的な作業だ。
いまの高級シャープペンシルは、この作業を一つずつ引き取っている。回すのをやめさせ、ノックを減らし、折れないようにした。
では、どこまで自動化できるのか。そして、自動化すると書き味は変わるのか。
三つの系統を分けて、その違いと書き比べるときの見方を考えたい。
機構を加えると、先端の動きや紙への当たり方も変わる。その違いまで含めて選ぶ話だ。
自動化には、三つの系統がある。
まず整理しておきたい。自動化されているものは三つある。
一つ目が、芯の向きだ。書くたびに芯が少し回り、片減りを防ぐ。人が指で回していた動作を、上下運動から取り出している。
二つ目が、芯を出す動作だ。オレンズネロでは、パイプが芯を守る動きに加え、紙から先端を離すたびに芯を送る機構を備えている。
三つ目が、力の加減だ。強く書いても芯が折れないように、ばねが力を逃がすか、パイプが芯を守る。人が力を抜いていた部分を、道具が引き受けている。
この三つは同じものではない。単独で備えるものも、複数を組み合わせたものもある。DIVEのように回転と自動芯繰り出しを組み合わせる製品もあるが、機構の数だけで価格順には並べられない。
そして三つとも、書く動作そのものを動力にしている。電池は使わない。ここは、日本のメーカーの作り方らしいところだと思う。
同じ紙に、同じ文章を書いてみる。
比べるなら、使う紙、芯径、芯の硬さ、文章の長さをそろえる。持つ角度や書く速さも、普段と大きく変えない方がいい。
見るところは四つ。線の太さ、途中でノックした回数、芯が折れた回数、書き終えたときの手の感じだ。
クルトガでは、書き始めと終わりの線がどう変わるかを見る。オレンズネロでは、最初の操作と途中の操作を分けて数える。デルガードでは、説明書どおりの芯の出し方を守る。
無理な筆圧を加えて壊れるまで試す必要はない。いつもの文章を、いつもの量だけ書く。その方が、自分に合うかという問いに近づける。
ここで紹介しているのは比較の方法で、店で測定した結果ではない。疲れ方は人によって違うので、一つの機構に一律の点数を付けることもしない。
自動化すると、書き味は変わる。
機構の違いは、紙に当てたときの感触にも関わる。
芯が回る機構は、書くときに芯がわずかに沈んで戻る。この動きがあるぶん、紙への当たりが少し柔らかくなる。硬い書き味が好きな人は、これを嫌う。
オレンズネロではパイプが紙に触れる。その感触が好みに合うかを確かめたい。自動芯出しを備えるすべての製品が、同じ接触の仕方をするわけではない。
折れない機構のうち、力を逃がす方式も同じで、ペン先が沈む感覚がある。
つまり、機構は無料ではない。何かを自動化すると、そのぶん手に伝わるものが変わる。
自動で芯を回したり送ったりしない製品にも、先端の動きを抑えた設計がある。機能の数と、好きな書き味は別の話だ。
自動化しない、という選択もある。
こう考えると、機構の有無は上下ではなくなる。
自動芯出しなら途中のノックを減らせる。そのかわり、パイプが紙に触れる感触など、確かめたい点も増える。
機構を絞った製品には、先端の動きを少なくした設計もある。ただし、耐久性や掃除のしやすさは製品ごとに確かめる必要がある。
どちらを選ぶかは、何を大事にしているかで決まる。長く書く人でも、ノックの少なさを優先する人と、先端の動きが少ない方を好む人がいる。
面白いのは、詳しくなるほど機構のない方に戻ってくる人がいることだ。ひととおり試したうえで、金属軸で何も入っていないものに落ち着く。
道具に慣れると、自分でやる動作が苦にならなくなるのかもしれない。
どこまで任せるかは、書く人が決める。
まとめると、いまのシャープペンシルは三つのことを自動化できる。芯の向き、芯を出す動作、力の加減。
全部任せることもできるし、一つも任せないこともできる。
そして、任せるほど自分に合うわけではない。書き味の違いと価格を、製品ごとに比べたい。
自分がどこで手を止められているかを知っていれば、必要な機構だけを選べる。全部入りを買う必要はない。
琴平文具店の特集では、機構・素材・重心を別々の軸として扱っている。同じ予算でも、どこを優先するかで候補は変わる。
自動化しない一本を選ぶことも、仕組みを知ったうえでの選択になりうる。
シャープペンシルは、どこまで自動化できるのか。かなりのところまでできる。ただし、どこまで任せるかは書く人が決める。
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