製図用シャープペンシルの長いガイドパイプ、滑り止め、重心には役割がある。図面を引かない人にも使われる形を、部位ごとに見る。

図面を引かない人が、製図用を買っている。

シャープペンシルには、製図用をもとにした形のものがある。

先端から細い金属のパイプがまっすぐ伸びている。握るところには細かい溝が刻まれていて、指が滑らない。全体は黒か銀色で、色や模様がほとんどない。

製図に使う人だけでなく、ノートに文字を書く人にも選択肢になる。

不思議な話ではある。製図の道具が、製図をしない人に選ばれている。

けれど売り場に立っていると、これはよく分かる。並べたときに、明らかに格好いい。他のシャープペンシルより、道具らしく見える。

その格好よさがどこから来ているのか。先端、グリップ、重心と分けて見ると、それぞれの役割が見えてくる。

細いパイプは、定規のためにある。

まず先端のパイプだ。製品ごとに長さは異なるが、スマッシュなどは四ミリのパイプを採用している。

細長いガイドパイプは、定規に沿って線を引くときに役立つ。先端が見やすく、定規の縁に芯を近づけやすい。

パイプが細ければ、定規にぴったり当てられる。しかも金属なので、定規に擦れても削れない。

もう一つ、上から見たときに芯がよく見える。どこに線が引かれるかが分かるので、狙った位置に正確に置ける。

つまり、あの細さは全部、正確さのための形だ。

ノートを取るときにも、これは効く。書いている文字が指やペン先で隠れない。細かい字を詰めて書く人には、かなり使いやすい。

図面を引かなくても、意味が残っている。

刻まれた溝は、長時間のためにある。

握るところに付いた細かな凹凸は、ローレットと呼ばれる加工によるものだ。模様や加工方法には種類があり、指の滑りを抑えるために使われる。

これは滑り止めだ。図面を引く仕事は、何時間も続く。手が汗ばんでも、指が疲れても、ペンが滑らないようにする必要がある。

ラバーの柔らかさとは別に、金属の凹凸で握りを支える方法がある。どちらも摩耗や汚れは起きるので、金属なら何十年も同じ状態とまでは言えない。

触ってみると、この溝はけっこう硬い。長く握ると指に痕がつくこともある。柔らかいグリップに慣れていると、最初は驚く。

ただ、この硬さが好まれてもいる。指が確実に止まる感じがある。書いている間、ペンが手の中で動かない。

見た目としても、この溝が効いている。細かい規則的な模様が、道具らしさをつくっている。

重心が低いのは、線をまっすぐ引くためだ。

三つ目が重心だ。製図用のシャープペンシルは、先端の方が重い。

金属のパーツが先端側に集まっているので、持つと自然にペン先が下を向く。この状態だと、力を入れなくてもペン先が紙に安定して当たる。

線をまっすぐ引くには、ペン先が動かないことが要る。手で押さえつけて安定させるのではなく、道具の重さで安定する方が、長時間続けられる。

低重心という言葉はよく使われるが、実際に持ち比べると差ははっきりしている。同じ重さでも、重心が先にあるものと後ろにあるものでは、まったく別の道具に感じられる。

先端寄りの重さを安定と感じる人もいれば、動かしにくさと感じる人もいる。速さや疲れ方は、持ち方を含めて確かめたい。

このあたりは好みなので、握ってみるのが早い。

使う場面が変わっても、形は残る。

こうして見ていくと、製図用シャープペンシルの格好よさには、装飾がひとつもない。

細いのは定規や視界のため。溝は滑り止め。重心の設計は持ったときのバランスに関わる。形の中に、使う場面が残っている。

全部、機能から来た形だった。

図面を画面で作る場面が増えても、手書きの製図や学習で使う道具は残っている。その形が、一般の筆記にも引き継がれている。

同じことは他の道具を見ても考えられる。必要があって生まれた形に、あとから美しさを感じることがある。

機能から生まれた形は、機能がなくなっても美しい。逆に、最初から格好よさを狙って作られた形は、たいてい古びる。

製図用が四十年も五十年も同じ形で売られているのは、そういうことだと思う。

格好いいものには、たいてい理由がある。

製図用の一本を「格好いいから」と選んでもいい。理由を知るのは、そのあとでもいい。

それでいいと思う。理由を知らなくても、良い形は手が選ぶ。

ただ、知っているともう少し楽しい。この細さは定規のためで、この溝は何時間も握るためで、この重さは線をまっすぐ引くためだった。図面を引かない自分が使っても、その理由は効いている。

琴平文具店の特集では、ロットリングとスマッシュを別の記事でも紹介している。同じ製図由来でも、先端の収納やグリップのつくりは違う。

その中から一本を選ぶとき、決め手になるのはたいてい重さと溝の硬さだ。見た目はどれも似ているので、最後は手が決める。

色を選ぶ楽しみがないぶん、形と重さに集中できる。それはそれで、選び方として気持ちがいい。

製図用シャープペンシルは、なぜ格好いいのか。格好よくしようとしていないからだ。

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