メーカーと工房を、順位を付けずに十三並べる。国やブランドの名前だけで決めず、どのシリーズが何を大切にしているかを見るための図鑑だ。

会社の出自を見ると、道具が分かる。

シャープペンシルを選ぶとき、メーカーの名前で見ることは少ない。だいたい、機能か値段か見た目で決める。

けれど会社の成り立ちを知ると、その道具がなぜそういう形をしているのかが見えてくる。

鉛筆から始まった会社。製図具から始まった会社。万年筆から始まった会社。木工の工房。出発点が違えば、シャープペンシルに求めるものも違う。

ここでは十三社を、順位をつけずに並べる。どれが一番かという話ではない。棚に並んでいるものが、それぞれどこから来たのかという話だ。

一社ずつ見ていくと、道具の性格に理由があることが分かる。

形も、重さも、値段の付き方も、その会社がどこから来たかで決まっている。

日本の四社を、機構から見る。

ぺんてる。スマッシュのような一般筆記用の定番と、オレンズネロのような自動芯出しの製品がある。同じメーカーの中にも、設計の違う方向が並ぶ。

三菱鉛筆。鉛筆の会社で、ユニの名で知られる。シャープペンシルでは、書くたびに芯が回って尖り続ける機構を実用化した。手頃な価格帯から始まり、いまは木軸や金属軸の上位モデルまで広がっている。

パイロット。S20では樹脂含浸カバ材を軸に使う。一方でドクターグリップには、握りや芯折れを助ける仕組みもある。木軸だけの会社ではない。

ゼブラ。芯が折れないようにする仕組みで知られる。強い筆圧で書く人のための道具という方向がはっきりしている。

この四社には、筆記の動作を助ける機構がある。同時に、形や素材を大切にした製品もある。会社全体を一つの性格に閉じ込めない方が、選択肢が見える。

外から見ると、どれも地味な樹脂の軸だったりする。値段の理由が見えないので、説明されないと分からない。

ドイツの四ブランドを、形から見る。

ロットリング。製図に関わる筆記具で知られるドイツ発のブランドだ。600の固定式先端、800の収納機構など、モデルごとの違いを見たい。

ステッドラー。鉛筆や色鉛筆に加え、製図用シャープペンシルも展開するドイツのメーカーだ。シリーズごとの芯径やグリップを見比べる入口になる。

ラミー。ドイツのデザイン主導の会社。万年筆で知られるが、シャープペンシルもある。形がはっきりしていて、遠くからでも分かる。

カヴェコ。こちらもドイツ。小さくて短い軸が特徴で、ポケットに入れて持ち歩く筆記具をつくってきた。

この四ブランドを金属軸だけのメーカーと考えると、見落としが生まれる。樹脂の製品や異なる機構もある。軸の形に注目して見る、という読み方の一つだ。

金属軸なら、重さや表面の仕上げが手に伝わる。機構だけではない、値段の見方がある。

スイスと、日本の工房。

カランダッシュ。スイスの筆記具メーカー。色鉛筆でも知られている。作りの精度が高く、仕上げが丁寧だ。値段も高い帯にいる。

そして、大きな会社ではないところが二つ。

野原工芸と工房楔。どちらも木軸の筆記具を手がける。樹種によって価格が異なり、木目は一本ずつ違う。

工房の木軸も、軸だけを作っているとは限らない。野原工芸は部品メーカーと共同開発したオリジナル部品を案内している。素材と機構の両方を、製品ごとに確かめたい。

大きなメーカーと工房が同じ棚に並んでいるのが、シャープペンシルという分野の面白いところだと思う。数千円の帯で、量産品と一点ものが隣り合っている。

日本の中堅にも、面白い会社がある。

大きな四社の脇にも、名前を覚えておきたい会社がある。

オート。筆記具をつくる日本のメーカー。MS01には、ガイドパイプと芯の出る長さを調節する仕組みがある。

トンボ鉛筆。鉛筆と消しゴムに加え、シャープペンシルも手がける。MONO graphなど、消しゴムや芯を出す操作に注目したシリーズがある。

いつも選ぶメーカーから少し目を移すと、別の操作や形に出会える。

けれど、値段のわりに作りが良いものが混じっている。棚の端の方に、そういう一本が置かれていることがある。

有名なメーカーの定番を一本持ったあと、こういうところに手を出し始めると面白くなる。知られていないものを見つける楽しみが出てくる。

選ぶときは、会社より系統で見る。

十三社を並べてみると、いくつかの系統に分かれる。

機構、軸の形、表面の仕上げ、木の素材。国で線を引くより、製品のどこを見るかを決めたい。

自分が何を求めているかが分かっていれば、系統で絞れる。ノックを減らしたいのか、金属の手触りが好きなのか、木目を選びたいのか。

ただし、同じ会社の中でもシリーズによって性格が違う。ここは注意がいる。同じロゴがついていても、別の道具のことがある。

だから最終的には、シリーズの名前まで見ることになる。

同じ会社の中で、機構に振ったものと軸に振ったものが並んでいることもある。会社名だけで判断すると、外す。

ここで紹介した十三のメーカーと工房は、琴平文具店の現在の取扱一覧ではない。また、ブランドが生まれた国と、個々の製品の製造国は一致するとは限らない。購入時は型番と表示を確かめたい。

そして、どの系統にも定番と呼ばれるものがある。長く売れているものは、たいてい何かに徹している。

シャープペンシルをつくる会社は、それぞれ違うところから来ている。並べてみると、それがよく分かる。

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